異性化糖
今では異性化糖は、ソーダ類などの清涼飲料水をはじめ、お菓子や調味料にまで入っています。この糖は砂糖以上にむし歯を作り、また糖代謝を狂わせることで低血糖症や、様々な慢性疾患の元になっています。砂糖以上に凶悪で、アメリカで肥満や慢性疾患が蔓延した元凶ともいわれる異性化糖ですが、どうして今日これほどまで普及したのでしょうか。というわけで今日は、異性化糖ついて書こうと思います。
異性化糖とはデンプンから作る糖類で、果糖ブドウ糖液糖や、ブドウ糖果糖液糖のことを指します。デンプンは基本的にブドウ糖という単糖がたくさん繋がった多糖です。このデンプンをα-アミラーゼ、グルコアミラーゼによってブドウ糖にします。ブドウ糖は砂糖よりも甘みが低く、砂糖を100とすると、ブドウ糖は65~
80の甘みしかありません。一方果糖は120~170(温度が低いほど甘みが強い)と、強力な甘みを持つため、グルコースイソメラーゼという酵素を用いてブドウ糖の一部を果糖に変換します。ブドウ糖を果糖にすることを異性化と呼ぶため、こうして作られた糖を異性化糖といいます。
こうして作られた異性化糖は、通常果糖分が42%、ブドウ糖58%とブドウ糖の方が多いため、ブドウ糖果糖液糖と呼ばれます。さらにクロマトグラフィーによって果糖分を高めることができ、果糖が多くなった液糖を、果糖ブドウ糖液糖といいます。アメリカでは、デンプンは主にトウモロコシから作るコーンスターチを使うので、HFCS(high-fructose corn syrup)とも呼ばれます。
さて、1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見して以来、ヨーロッパでは大航海時代が始まりました。新大陸の植民地化は、最初はインディオの文明からの略奪や奴隷の捕獲が目的でしたが、17世紀にはカリブ海諸島を中心に、サトウキビの大規模プランテーションが展開されました。砂糖は当時高級品でしたが、プランテーションの発展により、価格が安くなるとともに、大量に流通した砂糖は世界商品となりました。
20世紀に入ると、砂糖は世界中でこよなく愛される食品として大量に流通しますが、1962年のキューバ危機によって、砂糖の国際価格が急騰します。そこで、砂糖に代わる安価な甘味料を求めて世界中で開発が始まりました。そして1965年、日本で異性化技術が開発され、異性化糖が誕生しました。異性化技術はアメリカにわたり、デンプンを用いて砂糖に代わる安価な甘味料として普及し始めました。しかし異性化糖は液体であり、保管や加工に難があるために、すぐに砂糖にとって代わることはありませんでした。
1996年、アメリカのモンサント社は、遺伝子組み換え技術を使ったトウモロコシ、通称キング・コーンを作って販売し始めました。このコーンは味がとてもまずく、食べられたものではありませんでしたが、デンプンの収量が従来種の約5倍と高く、またラウンドアップ耐性で害虫に対する耐性も持っていたため、農家の間で普及していきました。しかし、2000年の時点では、キング・コーンまだアメリカで生産されたトウモロコシの約25%のシェアに過ぎませんでした。
ところがアメリカ政府は、トウモロコシを栽培する農家に助成金を出し、その栽培を推奨したために2009年にはトウモロコシの作付面積が急拡大し、さらにトウモロコシ全体の実に85%がキング・コーンとなるほどになりました。なぜアメリカ政府がトウモロコシの栽培を推奨したのかは、モンサント社とアメリカ政府の関係を調べると分かります。
アメリカでは国を挙げてトウモロコシの生産量を増加させたので、大量のコーンスターチが市場に溢れ、ダブつくようになりました。そこでそのコーンスターチを利用して、大量の異性化糖が安価に作られ、砂糖よりも非常に安くなったために世界中に広まったというわけです。特に日本では、原材料をそのままで輸入するのではなく、加工された状態で輸入すれば遺伝子組み換えの表示をしなくても良い(キャリーオーバーという)ので、大量に入ってきました。
ちなみにアメリカは、これでもまだコーンスターチが余ってしまったために、バイオエタノールといってガソリンの代わりの代替燃料まで作って、その使用を義務付けたりまでしました。ここまでキング・コーンを大量に販売すれば、モンサント社の利益も莫大でしょう。その利益の一端を、日本もかなり担っているというわけです。
そうして日本では、異性化糖が大量に氾濫し、むし歯の罹患率は歴史上最悪の水準まで高まり、生活習慣病が蔓延し、ガンになる人が増加し、うつ病と診断される人が急増し、社会が大変不安定な状況になっています。これだけ危険な異性化糖がどうしてこんなにも氾濫しているのか、ご理解いただけたでしょうか。
投稿日:2013年6月10日 カテゴリー:予防歯科, 院長ブログ