歯周病の基礎知識
平成23年歯科疾患実態調査によると、日本人の30歳以上80歳未満の86%が歯周病であるとのことです。このような非常に高い罹患率の疾患である歯周病とは、どのような疾患なのでしょう。というわけで今回は歯周病について簡単に説明します。
歯周病とは歯そのものに起こってくる疾患ではなく、歯の周りの組織である歯肉や歯を支える骨である歯槽骨に起こってくる病気です。初期の段階では歯ぐきが腫れたり出血したりします。この状態を歯肉炎といいます。さらに炎症が広がると、歯と歯ぐきの境目が破壊され歯周ポケットが形成されたり、歯を支える骨(歯槽骨)が破壊されます。このような状態を歯周炎といいます。これらを総称して、歯周病と呼んでいます。
歯周組織に炎症を起こす原因は細菌(歯周病原細菌)です。現時点では歯周病の原因であると断定された特定の菌というものはありません。歯周病の発症や進行に関与しているであろうと推察される一連の菌を歯周病原細菌と呼んでいるに過ぎません。そして一連の歯周病原細菌は口腔内常在菌であり、誰の口の中にでもいるありふれた菌です。歯周病原細菌は人の口の中だけでなく、野生動物の口の中にだって存在します。それでも、野生動物は歯周病にはなりません。
そうであるならば、歯周病という病気は特定の細菌感染によって起こる疾患というものではなく、全身及び局所の免疫力の低下によって起こってくる、いわゆる“日和見感染症”であるといえます。そして歯周病が日和見感染症であるのなら、歯周病の治療にとって最も重要なのは、全身及び局所の免疫低下を引き起こした原因を特定し、その原因を取り除くか改善するかして、全身及び局所の免疫力の回復をしなくてはなりません。
これは歯周病を理解するうえで最も基本となることですから、しっかりと覚えてください。