再治療
歯医者をやっていると、色んな患者さんがやってきます。歯科での治療の多くは、以前(よその歯医者で)治療したところの再治療です。ウチではざっと歯科治療の8割くらいが、この再治療であるほどです。これって相当な数でしょう?
「歯が痛い」、「歯が欠けた」、「歯ぐきが腫れた」、「詰め物(被せ物)が取れた」なんていう患者さんのほとんどが、再治療になるわけですが、なぜ一度治療してある歯が再治療になるのでしょうか。それには様々な原因があるのですが、圧倒的に多いのが、前の治療の不備です。特に、むし歯の取り残しが非常に多いのです。
むし歯になって歯医者で治療を受けたとき、むし歯を完全に取りきらず、一部むし歯が残った状態で詰めたり被せたりする。そうすると残されたむし歯が詰め物や被せ物の下で広がっていき、やがて再治療が必要になる、というわけです。そしてそのたびにまた、むし歯を完全に取らなかったり、また
は根の治療を適当でいい加減にしておけば、またしばらくして再治療が必要になる。そうしてやがて抜歯になるのです。そんなひどい事、と思われるでしょうが、これが現実です。
歯医者はむし歯を取りきらなくていいの?根の治療を適当に終わらせていいの?って思われる人も多いでしょう。でも日本の歯科医療制度において、特に保険医療制度においては、歯科医師は治療内容に対する責任を負わなくても良いようになっています。ですから故意であろうがなかろうが、むし歯が残ったままであっても、歯科医師には一切の責任は問われません。いや、むしろ歯科医院の経営にとっては、むし歯が“残っていた”方が、好都合ですらあるのです。
なぜなら歯科医院はむし歯や歯周病などの口腔疾患の治療を行う事で、治療費をいただいて経営しています。ですから経営上は、むし歯になる人が増え、治療が増えれば増えるほど、医院は儲かることになります。さらに再治療を繰り返せば繰り返すほど、治療は複雑になり、さらに治療費はかさみます。ですからむし歯を“残す”ことは、患者側にとってはマイナスでしかありませんが、歯科医院側にとっては大いなるプラスになるのです。
このような現状の歯科医療制度の中で良い治療を受けたいと希望しても、実際には無理な相談です。そして儲かっていて待合室が患者さんでいっぱいな歯科医院ほど、このような診療をしている傾向があるというのが現実なのです。
そんな日本の歯科医療の現状を目の当たりにして、僕が選んだ選択が、「本質的な予防歯科を日本に広めること」でした。むし歯になる人がいなくなれば、歯医者の治療の質は関係なくなる。これこそが歯科医療に携わる人間として最も為し得ねばならない使命だと考え、実践しているのです。ですから僕に言わせれば良い歯医者とは、予防を実践している歯医者でしょう。
そして本質的なむし歯予防において、歯磨きは関係ありません。歯磨きはむし歯を予防しません。ですから「むし歯予防のために、歯磨きをしっかりと行ってください」という歯医者は詐欺ですから、行ってはいけません。
なぜなら、歯磨きがむし歯の原因という歯医者は、前の治療の不備で再治療が必要になった場合でも、「あなたの歯磨きができていなかったから、またむし歯になったのだ」と、嘘をついて騙す歯医者だからです。そもそも歯磨きなど、我々プロの歯科医療従事者であっても完璧にプラークを落とし切ることなんてできません。ですから歯磨きのアラを見つけようと思えばいくらでもできます。そしてアラを見つけて再治療の言い訳にしようという魂胆なのです。
日本の歯科医療の現状を知り、もういい加減歯医者に騙されて無駄な治療費を貢ぎ続けるのは止めにしませんか?そこに救いはありませんから。
投稿日:2013年12月14日 カテゴリー:その他歯科治療, 院長ブログ