エナメル質と象牙質
人間の歯は象牙質というものでできていて、歯の中には神経や血管の入っている歯髄という部分があります。歯の頭の部分で口の中に露出している部分はエナメル質といい、歯の根の部分にはエナメル質はありません。エナメル質は骨や歯ぐきとはくっつかないようになっているので、歯ぐきを突き破ってお口の中に生えてくるわけです。
エナメル質は人体の中で最も硬い組織であり、また酸に対する抵抗性も高くなっています。むし歯は糖質を摂取することによって、お口の中の細菌が酸を作り、歯を溶かす病気です。エナメル質が溶けはじめる臨界pHは5.5となっており、pH5.5以下の酸を作り出すことのできる糖質は、ブドウ糖や果糖といった単糖や、二糖類である砂糖です。この強力な甘みを持つ糖類だけが、エナメル質を溶かすほどの酸を作り出します。
一方で象牙質は酸に弱く、臨界pHは6.7と、中性に近くなっています。なので象牙質がお口の中に露出すると、そこはむし歯になりやすくなってしまいます。お米やパン、麺類などの主成分であるデンプンは、唾液の中のアミラーゼという酵素によって、二糖類である麦芽糖に分解されます。お口の中の細菌は麦芽糖を利用して酸を作りますが、麦芽糖から作られる酸は通常pH5.5を越えることはありません。しかし象牙質にむし歯を作るくらいの酸は作るのです。
実際食料生産開始初期の農耕民族のむし歯とは、歯ぐきが下がって歯の根の部分が露出した部分に出来たむし歯でした。そして歯ぐきが下がるのは加齢変化ではなくて歯周病という病気ですから、糖質は例え砂糖でなくても免疫低下を引き起こし、歯周病をはじめ様々な病気を生み出したのです。
まとめると、エナメル質をむし歯に出来るのは砂糖や異性化糖のような強い甘みを持つ糖類である。一方象牙質は甘みの無いデンプン質であってもむし歯になる、ということなのですね。
投稿日:2014年3月29日 カテゴリー:予防歯科, 院長ブログ