正確には、人間もビタミンC合成のための回路は持っています。ビタミンCは哺乳類では通常、肝臓でブドウ糖から合成されます。ブドウ糖からD-グルクロン酸、D-グルクロン酸ラクトン、L-グロノラクトンまでは人間も実際に肝臓で合成しているのですが、最後のビタミンCを合成するための酵素である、「L-グロノラクトン・オキシダーゼ」を人間は作ることができないために、ビタミンCを生合成できません。
ここに着目したポーリングは、人間は先天的な遺伝病を持っている生き物であると考えました。そしてビタミンCを合成できる動物は、いったい一日でどれくらいの量を合成しているのかを調べました。すると、ラットのビタミンC合成量は、人間換算で約18g(18000mg)にも及ぶことが分かりました。
当時の栄養学の世界では、ビタミンCの人間の一日の所要量は、40~60mgでしたから、この量がいかに多いかが良く分かるでしょう。ビタミンCの一日所要量は、これ以下になると、壊血病などの欠乏症が現れますよという目安でしかありませんでした(これは現在でもそうです)。
さらにポーリングは、風邪をひいていたり、強いストレスを感じている時などは、さらに多くのビタミンCを必要とすることを発見しました。ここからポーリングは、人間にとって必要な栄養素は、欠乏症を起こさない必要最低限の量よりも、はるかに多く必要であると考えました。この栄養素を、人体を構成する分子レベルで至適量与えることにより、人間本来の健康が得られるとする考え方が、オーソモレキュラー(分子矯正、分子整合)の考え方を生んだのです。
一方のホッファーにつきましては、次回説明します。