先住民食とは
当クリニックでは予防歯科の根幹として、食事指導を行っています。かつてはオーソモレキュラー療法で指導している「糖質制限」を指導していましたが、現在では当クリニックオリジナルの「先住民食」を指導しています。なぜ糖質制限から先住民食に変わったのか、その理由を説明します。
まず、オーソモレキュラーの糖質制限ですが、これは生化学的、生理学的、分子生物学的見地から、人間にとって健康でいられるための最適な食事法として考案されたものです。糖質を控え、タンパク質、脂質をしっかりと摂るという食事法により、糖質過多による低血糖症や糖尿病を予防し、かつ健康維持に必要な栄養素をしっかりと摂ることを目的としています。
一方で先住民食のベースとなる考えは、「健康の秘訣は健康な人から学べ」であり、予防歯科ですから、「むし歯にならない生き方はむし歯の無い人から学べ」というのがベースとなっています。むし歯
の無い人たちとして、世界の僻地で伝統的な生活を営んでいる先住民族の存在があり、彼らの食生活の研究から、先住民食は生み出されました。
似たような考え方で、日本では崎谷博征医師の提唱している「ナチュラルパレオダイエット(原始人食)」がありますが、これは農耕開始以前の原始時代の人類の食と健康の関係から導き出された食事法です。
糖質制限も先住民食も原始人食も、基本的な部分は共通であり、糖質を控え、タンパク質、脂質を多く摂るように指導しています。むしろ、スタートの考えが全く違うにもかかわらず、結果的に同様な指導法となることに、僕は非常な関心を持ちます。
糖質制限と先住民食が共通の特徴なのであれば、先住民食は必要ないのでは?と思われる方も多いでしょう。しかし先住民食は、糖質制限や原始人食とは大きく異なる点もあります。
まず第一には、先住民食では砂糖を嗜好品ではなく、「麻薬」と位置付けていることです。麻薬ですから甘い物が好きな人は砂糖依存、砂糖中毒となり、先住民食では何よりもこの麻薬中毒からの脱却を目指します。これ無くしてその後の食事指導はあり得ないと考えています。砂糖のみならず甘み全体に中毒性があると考えていますから、当然代替甘味料の使用も全て否定しています。
そして第二の特徴として、妊娠前や妊娠中、授乳中の女性、成長期の子ども、病中・病後の回復期など、特別の栄養を必要とする人には特別食を摂るように指導していることです。ただし、先住民食はあくまで予防歯科の食事指導ですから、病気の治療のための食事法ではありません。
いずれにせよ、人間が本来の健康を維持するために必要な食事上の特徴というのは、栄養学的観点からみても、先住民族の伝統食をみても、農耕開始以前の原始人の食生活をみても、驚くほど共通していて、そこに例外は無いということだけは、皆さんも覚えておくべきでしょう。
投稿日:2015年7月1日 カテゴリー:予防歯科, 院長ブログ