西洋医学であればきちんとした医学教育を受け、医師免許を持った医師が診察をし、治療するので、良くも悪くも標準化された治療を受けることができます。しかし代替医療の世界では、治療の根拠や質が保証されていない場合がほとんどです。

そもそも疾患の予防と治療とは、全く別の概念です。疾患の予防のためには、疾患の原因を取り除くことが最も確実な方法です。疾患の原因を知るには、疾患の存在しない集団と疾患の存在する集団との生活状態を比較することによって見出されます。例えばむし歯の予防のためには、むし歯の無い集団とむし歯のある集団との生活状態の比較を検討すれば良いのです。そうすれば、むし歯が糖質、特に砂糖のような甘みの強い糖によって引き起こされる疾患であり、むし歯の予防のためにはこのような糖の摂取を避ければ良いということが分かります。

一方で疾患の治療法は、常に疾患の存在する集団からしか見いだされません。むし歯の無い集団には、むし歯の治療法なんて存在しようもありません。先住民集団は現代人が抱える慢性疾患の大半と無縁の生活を送っています。彼らの生活から多くの疾患の予防法を学ぶことはできますが、治療法や改善法を学ぶことは一切できません。

僕は予防歯科医師として、歯科疾患の予防法や、人間本来の健康を維持するための理想的な食事法を日夜調査・研究しています。予防歯科実践法として指導した食事法で、結果的に心身の不調が改善されたり、治癒したりすることはありますが、そこを目的にはしていませんし、患者に伝えたりもしません。