に行われた栄養学の精神医学への応用を紹介します。
1940年にドイツでは「生きている価値の無い生命」をいかに処分すべきか真剣に検討されました。精神病院に収容されているような人間は、まさにこのような生命であって、安楽死プログラムの対象にうってつけとされました。大きな精神病院の院長であったファルトハウゼンは、これら生産性の無い社会メンバー、特に若い子どもを除去する最良の方法は飢え死にさせることであると述べました。
ファルトハウゼンはジャガイモ、カブ、煮たキャベツからなる食事を提案しました。これは脂肪が無く、タンパク質が極めて少ない食事でした。この食事を与えられた者は、およそ3か月で衰弱して餓死していきました。この方法の利点は、医師たちが殺したのではなく、単に死ぬのを許しただけと思わせることができることだと、ファルトハウゼンは述べました。
この方法はファンミュラー博士によって採用され、1943年に、大きな病院に専用の飢餓病棟を2棟作り、ファルトハウゼン食で多くの患者を飢餓死させました。この方法はやがて用いられなくなるのですが、その理由は非人道的だからではなく、単に手がかかり効果が不確かであるからという理由で、もっと効率的な方法に取って代わったからでした。
現代でもこの考えは根強く残っています。もちろんファルトハウゼン食のように、餓死してしまうような決定的に栄養が欠乏した食事ではなく、餓死はしないが適度に栄養欠乏状態になり、病気になる食事法です。肉は体に良くない、動物の脂は血管を詰まらせる、現代人は野菜が足りない、などの考えを刷りこみ、栄養欠乏になるような食事を推奨しているのがそれです。このような食事を健康のために良いと信じ込まされている人は、ファルトハウゼンが言うところの「生きている価値の無い生命」とみなされている人たちであることを、知っておいた方が良いでしょう。