物性食品中心(プラントベースの食事)の食生活が推奨されました。
これによってアメリカ人の牛肉をはじめとした動物性食品の摂取量は減少し、植物性食品の摂取量が増加、これに伴いタンパク質の摂取比率が減少し、糖質の摂取比率が上昇しました。
その結果、アメリカでは肥満者が急増し、現在ではアメリカ人のおよそ2/3が肥満ないし過体重という状態となってしまいました。心疾患による死者はむしろ増加、アメリカ全体の医療費も100兆円を超え増え続けています。これはいったいどうしてでしょうか?
実は、飽和脂肪が肥満、高血圧、高コレステロール血症のリスクファクターであると科学的に証明された研究はありません。アメリカ医学研究の最大のセンターである国立医学研究所(NIH)は、飽和脂肪と心疾患に有意義な関係は認められなかったとし、さらに心臓病への他の因子も考慮し総合的に評価すると、高脂肪食は少しではあるが、むしろ平均余命を「長くする」ことを示しました。
また高脂肪食とガンとの関係についても、サイエンスの展望では次のように語っています。「15年と何億ドルの研究費をかけても世界がん研究財団およびアメリカがん研究協会は「確信できる」関連を見つけられないだけでなく「もっともらしい」関連さえも見つけることができなかった」。また、アメリカ医師会雑誌には「NIHによる大規模で8年にわたる疫学研究の結果として低脂肪食で心疾患、乳がん、大腸がんの減少がみられなかった」と、2006年の初めに報告されました。
アメリカやヨーロッパで飽和脂肪が悪者にされた背景には、ニトログリセリン合成のためのグリセリン需要の増大があったことは前にも述べました。飽和脂肪が悪者と考えられたのには、当時チョコレートやアイスクリームの普及とともに、肥満や高血圧、心疾患の増大が起こったことが背景にあります。
確かにチョコレートやアイスクリームは高脂肪の食品です。しかし、これらの食品には脂肪の他に、もっと健康に悪影響を与える物質が含まれています。そう、砂糖ですね。
不思議な事に砂糖に関しては、その健康に与える危険性はあまり叫ばれてはきませんでした。砂糖の害が公に語られるようになったのは、チクロやサッカリンなどの代替甘味料が実用化されるようになってからです。しかし砂糖の自然な甘みはいまだに多くの人に愛され続けています。
低脂肪はアメリカ人や日本人の健康状態を良くしてはくれませんでした。一方で砂糖の原料となるサトウキビは、2002年の世界の総生産量が12億9千万トンと、他の農作物よりもはるかに多く作られていましたが、10年後の2012年には18億3千万トンと、約1.5倍にもなっています。現在も砂糖の消費は増え続けているのですが、それでもあなたはまだ低脂肪にこだわりますか?