進化生物学からみたラットの実験
菜食主義者やマクロビ、玄米菜食推奨者は、粗食や断食を勧めます。人間は飽食から来る病気によって苦しんでいるのだから、腹8分目にしたり、断食したり、動物性食品をほとんど、あるいは全く摂らないようにしたりすることは、飽食による病気を防ぐ最も良い方法であると。
よくいうラットの実験で、食事のカロリーを制限すると、寿命が30%以上も伸びるというものがあります。この実験はあまりに有名であり、これによって粗食や食事制限、一日一食や定期的な断食が推奨される根拠となっています。そしてもちろん、この実験結果は再現性のあるものであり、捏造などではありません。
もし食事を減らすことが長生きにつながるのならば、なぜラットは自発的に食事制限をしないのでしょうか?仮説としては、ラットは野生の状態においては常に飢餓の危機にさらされてきたので、エサを食べる機会があるときには、いつだって
食べ過ぎてしまうのだという事。であるからカロリー制限をしたラットが長生きしたのではなく、カロリー制限をしないラットがエサを食べすぎることで、早死にしてしまったのだという説です。
しかし残念ながら、この説は信憑性が低いでしょう。なぜなら通常飼育のラットもカロリー制限のラットも、ともに体型や体重は標準的で、運動量もまた大きく変わらないからです。食べ過ぎによる初期の兆候をなんら示していないのですから、やはりカロリー制限ラットの方が通常より長生きしたと考える方が自然です。
ハーヴァード大学の生物学者であるスティーブン・オースタッドは、カロリー制限ラットに関する何百もの論文を詳しく調査し、ある共通の特徴に気が付きました。それは、カロリー制限ラットは確かに長生きするかもしれないが、このラットは子をもたない、それどころか、交尾さえしなかったのです。これは繁殖以前の成長状態でとどまり、適量の食料を待っているのかもしれないと考えました。
カロリー制限が寿命を延ばす効果は非常に興味深いものであるが、進化生物学者にとっては繁殖成功率からみてカロリー制限は致命的な問題であると結論づけました。
また、T・コリン・キャンベル博士は「葬られた「第二のマクガバン報告」」の中で、タンパク質制限をしなかったラットは、タンパク質制限したラットより、はるかにガンが発生したと報告しました。これは、強力な発ガン物質であるアフラトキシンを投与したラットを、20%タンパク質の飼料と5%タンパク質の飼料でそれぞれ育てた場合、20%タンパク質のラット全てに肝臓ガンができたのに対し、5%タンパク質で育てたラットには肝臓ガンが認められなかったというものです。
これもまた、タンパク質制限が成長に必要な栄養素の制限要素になっていたために、カロリー制限ラット同様、身体の発育が停止したために肝臓ガンにならなかったと考えられます。ガンの発育が起こらなかったことは、必ずしも進化生物学的に良い事であるとは限りません。
ちなみに同書では、アフラトキシンを与えない22%タンパク質飼料で育てたコントロール群のラットには、肝臓ガンが全くみられなかったと報告していますから、低栄養状態でガンを予防するよりも、発ガン物質を取り入れない食生活を送った方がよっぽど賢明であると考えられます。
こういった事実を知るならば、菜食主義、ナチュラル・ハイジーン、マクロビオティック、玄米菜食などのフードファディズムが、いかに自分たちに都合の良い理屈をこじつけたり、捏造したり、誇張したり、不都合な事実を隠ぺいしているか、良く理解できることでしょう。
投稿日:2016年4月27日 カテゴリー:予防歯科, 院長ブログ