とある方が断糖肉食を実践したところ、思わぬ体調不良に見舞われたとのこと。その方の実践した内容というのは、「当時は物凄くササミを食べ、根菜を避け、卵も白身のみ、黄身は捨てる。お酒は焼酎とウィスキーだけ、ビールも飲まない」というものだったそうな。
「すると、おならが臭い、筋トレしても底力が出ない、激しく動けない」となり、「ご飯を食べた時の感動は、爆発的なパワーを生み出す」ということを感じたのだそうな。まあそうなりますよね。
この人の食事の問題は、脂肪、特に動物性脂肪を極端に摂らなかったことにあります。動物性脂肪は人間の生存や健康維持において非常に重要です。狩猟採集で生活している先住民族は、動物性脂肪の摂取量が多いことも特徴の一つです。
「ヨーロッパ人が北米を探検していた19世紀、少数の探検家や毛皮目当ての罠猟師は、北部の平原で移動する先住民族と接触を持っていた。彼らは多くの狩猟採集民と同様に、ほとんど動物だけを食べて生きていた。北米に来たヨーロッパ人も必要に迫られて肉中心の食事をするようになったが、じきに体調を崩し、顔中にぶつぶつが出る者もいた。そうなったのは、現代人と同じく、動物の筋肉だけを食べていたからだ。先住民は彼らに、動物の肝臓や脾臓、骨髄、脳、とりわけ脂肪を食べることが大切だと教えた。言われた通りにしたところ、ヨーロッパ人はみるみる健康を取り戻したという。それらの部分には、筋肉にはない微量栄養素が豊富に含まれていたからだ。」(GO WILD、ジョン・J・レイティ:著より)
この他、北極探検隊の話など、動物性脂肪の重要性を物語るエピソードは枚挙にいとまがありません。特に北方系の先住民族ほど、動物性脂肪の摂取比率が高いことが知られています。
鶏のささみは肉の中でもとりわけ脂肪の少ない部分であり、また卵に含まれる脂肪分は卵黄のみに含まれます。ですからこのような食生活では極端な脂肪不足に陥ってしまうのは当然です。
やはり中途半端な知識で極端な食生活を送ることは危険です。先住民族の食生活から謙虚に学ぶべきです。食と健康に関して人類が積み上げてきた知恵や経験というのは、そんな単純なものではないのですから。