痛風は日本では、江戸時代までは非常に稀な疾患でした。それが明治時代となってみられ
るようになり、戦後に急増。このことから、明治になって文明開化とともに、肉食になっ
たことで痛風が起こるようになったと考えられていました。
しかし、洋食文化が日本にもたらしたのは、肉食だけではありません。砂糖の消費量も急増し、特に戦後の高度経済成長期には、砂糖の消費量もまたうなぎ上りに増加しました。
一方ヨーロッパでは、古くから知られた病気であり、主に富裕層にみられることから、ぜいたく病とされてきました。古くはアレキサンダー大王から、フビライ・ハン、メディチ家、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなどもまた、痛風だったことが知られています。
特に18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパでは庶民の間でも痛風が広まりました。しかし近年知られるようになったことは、このヨーロッパで古くからみられる痛風の主原因は、鉛中毒であったろうと言われています。というのも、ヨーロッパでは甘味料としてワインを鉛でコーティングした青銅器で煮詰めた、サパと呼ばれるシロップを用いていました。当時のワインはこのシロップで甘みを添加していたため、お酒好きの人に痛風がみられたのです。
また、缶詰が発明され、食品の保存技術が進んだのですが、初期の缶詰は蓋を鉛で塞いでいたため、鉛中毒が多発したと考えられています。
日本では、鉛入りのワインも無ければ、缶詰も江戸時代までは一般的ではなく、そのため鉛中毒もまたほとんどみられませんでした。また、砂糖も非常に高級品で、庶民にはなかなか手に入らないものでしたから、日本で痛風がほとんどみられなかったのでしょう。
昔のヨーロッパのお酒はワインが中心であり、また昔の缶詰は肉の缶詰が主でしたから、酒の飲みすぎや肉の食べ過ぎが痛風の原因と考えられたのも無理はありませんね。