歯科保険診療では混合診療が黙認されています。しかしだからといって、保険外(自費)
診療=ぼったくりというのは、いくらなんでも言い過ぎではないか、と思われる方もいる
でしょう。そう思われる方は、歯科の実態を知らなすぎます。
歯科保険診療では、犬歯から犬歯までの6前歯は、金属の被せ物の表側に白いプラスチックが盛られた冠(硬質レジン前装冠)が認められています。しかし、小臼歯や大臼歯部では認められていません。これはなぜだか知っていますか?そう、小臼歯部にも硬質レジン前装冠を適応してしまうと、小臼歯部の保険外の被せ物を売りつけられなくなるからです。小臼歯部が銀歯になるとかっこ悪いという患者の心理に付け込んで、保険外の差し歯を売り込むために、あえて小臼歯部は前装冠が保険適応になっていないのです。
小臼歯部の前装冠の保険適応が認められないのは、こう考える以外に合理的な理由はありません。またセラミックも保険適応にならないのも、保険外診療を売り込みやすくするためです。そのために金属アレルギーの人であってもセラミックによる治療を保険で受けられないのです。
歯科はその安すぎる診療報酬の見返りに、保険外診療を売り上げることで経営を成り立たせています。ということは、赤字の保険診療部分の金額も、保険外診療に上乗せされているのです。これは特に東京などの都心部の歯科医院で顕著です。
そしてまた、表向きは歯科も混合診療が禁止されているために、おかしなことになっています。というのは、「保険で認められている治療は、保険診療で行わなければならない」というものです。
このルールによって、保険医療機関では根管治療(歯の根の治療)は、保険診療で行わなければなりません。保険医療機関が保険外の根管治療を行うことは、明確な違法行為です。
そこで思い出してください。日本の保険診療の診療報酬は、OECD平均の1/6~1/8、アメリカの専門医と比べると1/12~1/20であるということ。これを根管治療で比べてみましょう。
アメリカの歯内療法専門医で行う根管治療の費用は、大臼歯で概ね2000ドル(24万円)程度です。日本の保険診療では、点数の高い抜髄で計算すると、大臼歯で計二日かかったとして、初診料218点、デンタル48点、歯科疾患管理料110点、抜髄570点、EMR60点、再診42点、根管充填110点+加圧根充加算164点、デンタル38点となり、合計1360点(13600円)となります。これはアメリカの平均的な治療費の5.7%にしか過ぎません。
治療費と治療の質は比例しますから、日本の保険診療では根管治療の質は極めて低いと言わざるを得ません。そして保険診療のルールでは、保険外の被せ物を入れる時は、根管治療まで保険診療で行って、支台築造(ポストコア)から保険外で行いなさいとされています。このため、被せが入っている歯の再治療のほとんどが、根管治療の不備によるものとなっているのです。
要は、ひどい根の治療の歯の被せ物に、本来保険適応になるべき被せ物を、歯科医院の赤字分まで上乗せされた状態で売りつけられているということ。これを「ぼったくり」と言わずして、何と言うのでしょう!
他にもぼったくりの現状は指摘すればたくさんあります。それもこれも、問題の元凶は厚生労働省が歯科において混合診療を黙認していることにあるのです。