歯医者って儲かってるの?という疑問をお持ちの方は多いでしょう。僕に関していえば、正直あまり儲かっていません。しかし生活していけるくらいのお金はあります。とはいえ、当クリニックは保険診療を行っていませんから、保険診療を行っている一般の歯科医院とは収益の仕組みが全く違います。そこで、日本の歯科医院の実に99%を占める保険診療を行っている歯科医院の台所事情を説明しましょう。
保険診療では治療ごとの保険点数が決まっていますから、普通に診療していれば、一回あたりの保険点数や、一人当たりの保険点数はおのずと決まってきます。しかも歯科の保険点数はかれこれ30年以上、実質変わっていません。物価上昇率や消費税率の上昇からみれば、むしろマイナスになってさえいます。
まあそれでも一応の参考として、一回の処置あたりの平均点数は500点として計算します。保険診療で利益を出すための目安としては、歯科医院一件につき、一日の来院患者数が平均30人以上とされています。
そこで採算ラインの30人が一日に来院するとして、月20日診療したとします。すると一日の診療点数が15000点となり、月の診療点数合計が30万点となります。保険診療の点数は、1点10円で医療機関に支払われますから、300万円の売り上げとなります。ここから家賃や人件費、材料代、技工代、リース費用、広告宣伝費などの経費を差し引くと、立地や条件によって異なりますが、院長の取り分としては大体50~100万円となります。
皆さんからみて、この金額はどうでしょう?良いと思いますか?それとも良くないと思いますか?歯科医院経営者はボーナスなどは貰えませんから、年収でみれば600万円から1200万円となります。家賃などの経費に関していえば、一般的に都心部に近いほど経費は高くなり、田舎に行くほど経費は安くなりますから、歯医者としては、お金を取るか、都会暮らしを取るかで悩むことになるのです。
…しかしこれはあくまで計算上の話です。実態はこんなに上手くはいきません。ちょっとデータは古いのですが、平成17年の厚生労働省のデータである、「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概要」と、「患者調査」から、実際の一日平均来院患者数を見ていきましょう。
この調査によると、歯科医院の一日平均来院患者数は、全国平均で19.1人となっています。東京都ではなんと、13.2人しかいません。こうなると、さっきの話は違ってきますよね。これはもちろん平均ですから、歯科医院によって来院患者数にはばらつきがあります。しかしそれでも、多くの歯科医院では、採算ラインとされる一日来院患者数の30人をクリアできていないことは、容易に想像できるでしょう。
日本中の多くの歯医者が採算ラインの患者数を確保できていないという現状にもかかわらず、潰れていく歯医者は驚くほど少なくなっています。これは一体どうしてなのでしょうか?その理由を知ったとき、きっとあなたの歯医者を見る目が変わることでしょう。