前回、脳は大食いの組織で、エネルギーをたくさん消費するがゆえに、怠けたがると書き
ました。人間はみなさんが思っている以上に本能的な生き物です。怠けたがる脳の本能は
変えられませんから、脳の本能を利用して、賢く生きるべきでしょう。
人間は消費エネルギーをなるべく減らそうと、常に考えています。では、運動が好きな人はどうなのでしょう。この場合でも、脳の本能は変わりません。運動によって身体能力を高めれば、それだけ狩猟の時に効率的に、楽に獲物を捕らえることができるでしょう。また優れた肉体は、異性を引きつけるのに有利でしょう。人間も他の動物同様、生殖が生存の重要な目的でもありますから。
ところで脳は、考えている時も、考えていない時も、寝ている時も、消費するエネルギー量はあまり変わらないのでしたね。ところが脳は、考えることも怠けたがります。これが厄介なところです。人間としての活動全体のエネルギー量をいかに減らし、最小の労力で最大のエネルギーを得るか、というのが脳の活動のテーマです。さらに脳は、現在のみならず、将来にわたってもずっと安定的に効率的にエネルギーを得ることができるような生き方をしようとします。
であるから、脳は常に有効に使い、良く考えさせ、最善の行動をシュミレーションして肉体を行動させるようにすべきです。ところが多くの人は、考えることを放棄したがります。
考えることを放棄する最も多いパターンは、自分以外の人間に考えさせること、もしくは自分以外の(自分よりも賢そうな人の)考え方を無批判に受け入れることです。この典型が宗教です。信仰とは、怠けたがる脳の本能を利用して、人の思考を支配することに他なりません。
人間は怠けたがる生き物であり、より楽に生きるためには、他者を利用するのが手っ取り早い方法です。ですから他者の怠けたがる脳を利用して、他者を洗脳して利用しようとする人がいます。こういう人に騙されないようにするためには、自分で考えることを怠けないようにすることです。
ところが現代人の多くは、小さい時から自分の頭で考えるということをせず、他者の考えを無批判に受け入れるように育てられてきています。このため自転車に乗るのに練習が必要なように、自分の頭で考えることにも練習が必要となっています。
自分の頭で考えることは、自分が思っている以上に難しいことです。でも、自分の頭で考えることを意識しない限り、怠けたがる脳の本能が勝ってしまいます。ですから自分の人生をより良いものにしたいなら、自分の脳を怠けさせず、考えることを習慣づけるべきでしょう。