色々な人が色々な食事法や健康法を提唱していますが、多くの主張は自分にとって都合の
良いところばかりを強調して、都合の悪いところは無視しているように見えます。これで
は議論は成り立ちません。自己の主張の正当性を主張するよりも、本当に正しいのは何か
を子ども心で考える方が、よっぽど建設的だと思うのですが。
例えば菜食主義やナチュラルハイジーン、マクロビオティックの推奨者が良く持ち出すロジックは、「肉を食べると肥満や高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管障害、ガンが増加する」というものです。そしてその根拠はというと、チャイナ・スタディだったりします。
ここでチャイナ・スタディを知らない人のために説明すると、チャイナ・スタディとはアメリカ人と中国農村部に住む人との健康状態と食生活の特徴を比較した研究です。中国農村部に住む人たちはアメリカ人に比べ、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管障害、ガンなどが非常に少なく、その原因が食生活にあるとされました。中国農村部に比べアメリカでは糖質の摂取量が少なく、タンパク質と脂質の摂取量が多かったこと、特に肉をたくさん食べる人たちに各慢性疾患やガンが多かったことから、肉は健康に良くないとされました。
僕的にはチャイナ・スタディにおいて、アメリカ人と中国人の砂糖の摂取量の差を知りたかったのですが、それはどこにも載っていません。糖質の摂取量の比較自体は行っていますが、いわゆるデンプン質と砂糖では、決定的に違うところがあります。それは、果糖です。デンプン質は分解されると全てブドウ糖となりますが、砂糖は50%ブドウ糖で50%果糖となります。
ここで肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管障害、ガンなどの原因が果糖であるとするならば、話のつじつまは全て合います。というのも、アメリカ人は糖質全体の摂取量は中国農村部の人よりも少ないのですが、砂糖や異性化糖の摂取量ははるかに多いのです。逆にいうと中国農村部の人々は、糖質の摂取自体は確かに多いのですが、糖質のほとんどを米や小麦といった穀物から摂っていて、甘い物をほとんど摂らないため果糖の摂取量はきわめて少ないのです。
果糖が健康に悪影響を与える非常に危険な糖であることは、近年良く知られるようになってきました。このように、理論の根拠となるデータや論文も、良く精査してみると矛盾や問題があったりします。
個人が自分を実験台にして様々な健康法や食事法を試してみるのであれば、自由にしてもらって結構でしょう。しかし、人に指導する立場になるのならば、自分の推奨している食事法や健康法が本当に正しいのか、矛盾や問題は無いのかを真摯に問い続け、もし矛盾や問題が見つかって今まで自分が指導してきた内容が間違っていると悟ったなら、素直に過ちを認め修正すべきであると僕は考えます。しかし残念ながら、そういう真摯な態度を持った指導者というのはなかなか存在せず、自分の主張に意固地になってひたすら他者を攻撃するだけの指導者が多いことに、深い憤りを感じます。