血液検査データでCK(クレアチニンキナーゼ、CPKとも)が上昇している場合、AL
Pや他の数値をみることで、副腎機能低下症を疑うと書きました。しかし実際にはCKは
高値よりも低値の人の方が圧倒的に多いです。
CKは元々筋肉に存在する酵素ですから、CKが低値ということは、筋肉量が低下していることを示します。クレアチニンも低値であれば、なおさら筋肉量の低下の可能性が高いです。
ということは、CKが低値の人は、運動不足だということでしょうか?いえ、きっとそうではありません。確かに筋肉は運動することで肥大します。しかし、特に運動していない人でも、日常生活を送るうえで必要な筋肉量くらいは維持しているものです。
CKが低値を示す人は、タンパク質代謝を示す他の数値も軒並み低値となっています。そしてまた、こういう人は低血糖症のような糖代謝異常が認められます。ということは、低血糖症による糖新生の亢進によって、タンパク質の異化が起こっていると考えられます。
これはどういうことかというと、低血糖症によって血糖値が低下すると、肝臓で糖新生が起こります。糖新生はまずはグリコーゲンの分解によって起こりますが、低血糖症ではグリコーゲンからの糖新生はすぐに尽きてしまい、タンパク質からの糖新生が起こるようになります。また、乳酸やグリセロールからも糖新生が起こります。
タンパク質からの糖新生は、タンパク質を構成するアミノ酸のうち、糖原性アミノ酸からブドウ糖が作られます。人体においてタンパク質の貯蔵は主に筋肉ですから、タンパク質からの糖新生が続くと筋肉がどんどんと痩せていくのです。
これが基礎代謝の低下した中高年以降では、筋肉量の低下を伴う肥満がみられるようになり、これをサルコペニア肥満といいます。いわゆる「ビール腹」と呼ばれる下腹部の突出しを特徴とする肥満です。
普段から良質の動物性タンパクをしっかりと摂り、糖質を控える食生活をすることで、筋肉量の低下は避けられます。おなかが出ているのが気になるのなら、運動するより先に食生活を見直すべきです。筋肉量の低下の原因は、運動不足ではなく、糖質過多の食生活にあるのですから。