人類は700万年もの間、狩猟採集で生活してきた。だから肉食に適応しているのだ、な
んて言う人は、糖質制限系の推奨者に多いですね。でも、それって本当にそうなのでしょ
うか?
人類を進化生物学の譜系から考察すれば、人類の祖先はおよそ1400万年~1200万年前にオランウータンと分化し、800万年~700万年前にゴリラと分化し、700万年~400万年前にチンパンジー(またはボノボ)と分化したと考えられています。人間を含むこれら霊長類は皆、ビタミンCを体内で合成することができません。そしてまた、人類を除くオランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボなどは、雑食性ですが主に果物を食べて生活しています。
進化の系統樹から考えれば、人間もまた、菜食よりの雑食性であると考える方がむしろ自然です。そしてまた、700万年前の人類の祖先もまた、現在の人間よりは、むしろチンパンジーやゴリラに近かったと考えるべきでしょう。
その後の考古学的観察から考えられるのは、脳容積が急速に大きくなったおよそ200万年前のホモ属の出現(ホモ・エレクトゥス)くらいから、肉食傾向が大きくなってきたと考えるのが自然でしょう。その後は脳容積の増大とともに道具や行動様式も進化してきて、狩猟技術が向上し、より肉食寄りになったと考えられます。これは骨格形態の特徴のみならず、石器などの道具の出現によっても裏付けられます。
しかしながら、現生人類は他の肉食動物が持っているビタミンC合成能を持たず、また進化の過程から植物性食品(特に果実や堅果など)の適応も持ち続けていると考えることは、特に不思議な事ではありません。ここから考えられるのは、糖質制限派が良く言う、「人間は糖質の代謝に適応していない。その証拠に血糖値を上昇させるホルモンは複数あるが、血糖値を降下させるホルモンはインスリンしかないから」というセリフもまた、説得力を失います。というのも、オランウータン、ゴリラ、チンパンジーだって、血糖値を降下させるホルモンはインスリンだけなのですから。
結局何が言いたいのかといえば、深い考察も無く適当な話を語れば、信頼されなくなるということ。一つ一つの事柄や疑問に対し、しっかりと調べていく事で、真実が見えてくることでしょう。