MEC食や断糖肉食といった肉食系食事法は、栄養欠乏を改善するという点で優れた食事
法です。そしてなおかつこれら食事法はまた、糖質制限の流れも汲んでいますから、糖質
を制限することも組み込まれています。一見これで食事と栄養の問題は改善されるように
みえますが、実はまだ大きな問題が残っています。
その問題とは、「甘い物中毒」です。というのも、現代人の多くが甘い物、特に砂糖や異性化糖などの甘みに対し、依存症となっているのです。この甘い物依存というのは非常に厄介です。というのも砂糖は麻薬であり、砂糖の依存性たるやコカインと同等かそれ以上といいます。そしてまた、甘い物中毒の人の多くが、自分が甘い物中毒であるという自覚すらないのです。
糖質過多や栄養欠乏のベースに甘い物中毒がある場合がほとんどであり、甘い物中毒を放置したままいくら糖質制限やMEC食などの食事法を行っても、期待したような効果が得られないことがしばしばあります。そこにこれら肉食系食事法に対する批判や失敗例が生まれてくるのです。
糖質制限にせよ、肉食系食事法にせよ、成功のカギはいかに甘い物中毒から脱却するか、甘い物に対する依存を断ち切るかにあります。食生活改善の第一歩は甘い物断ちにあり、それ無くしていかなる食事法も意味は無く、効果は得られないと知るべきなのです。
そこで甘い物断ちを中心とする食事法が考案されました。それが「先住民食」です。
通常各食事法はその食事法の最大の特徴を名前に組み込んでいます。糖質制限しかり、MEC食しかり、ケトジェニックしかりです。ところが先住民食では、甘い物断ちはおろか、肉食なのか菜食なのかさえ、その名前に反映されていません。
その理由は、食事法の名前に特徴を組み込むと、分かりやすくなる半面、誤解を招きやすくなるという欠点も併せ持ってしまうからです。ですからあえて「先住民」という、モヤっとする名前にして、そこに込められた意味を読み取ってもらいたいのです。
先住民食では、まず第一に甘い物断ちをしてもらいます。砂糖や異性化糖はもちろんのこと、代替甘味料であろうが全て、甘い物は完全に排除してもらいます。タバコや麻薬などの依存から脱却するのと同じ方法です。先住民食では砂糖を麻薬と断定していますから。
その上で、糖質制限とMEC食のような肉食系食事法を実践してもらいます。ベースの肉食系食事法に、さらに添加物が使われている加工食品や保存食品、また植物性油やその調理品も排除します。その上で新鮮かつ安全なお肉、魚介類、卵、チーズ、ナッツ、野菜類を好きなだけ食べてもらうという食事法です。
逆にいえば、甘い物断ちさえできていて、なおかつ論理的背景を理解している人ならば、糖質制限でもMEC食でも良好な結果が期待できるでしょう。
甘い物はあまりにも周りに溢れていて、小さい頃から慣れ親しんでいるために、なかなかその危険性を理解してもらえません。しかしながら、甘い物の恐ろしさこそが、糖質過多や栄養欠乏よりももっと根本的に、人間の健康を破壊している諸悪の元凶であるということを、先住民食を通じてもっと知ってもらえるよう努力していきたいと思っています。