腸管免疫と歯周病
した。
「歯医者ふぜいが腸管免疫について語るなんて、何勘違いしてるん
だ?」なんて声が聞こえてきそうですが、気のせいですねきっと。
ナイアシンが足りないのかもしれません。
歯科と腸管免疫とどういう関係があるのか?といえば、それはそれ
は深い関係があります。
特に、歯周病との関係は深く、歯周病の発症の原因が腸管免疫の機
能不全や機能低下によるといっても過言ではありません。
それでは歯周病がどういう病気かを、説明しましょう。
炎症を起こしたり、歯と歯ぐきの付着を破壊したり、歯を支える骨
(歯槽骨)を破壊したりする疾患です。
進行すると、歯を支える骨がどんどんなくなって、最後には歯がグ
ラグラになって抜け落ちます。
怖いですね~、なりたくないですね~、予防してますか?
歯周病は日本人では30代以上の約8割が罹患しているという、非
常にポピュラーな疾患です。
そんなに多いの!って思われたあなた、あなたも歯周病かも知れま
せんよ。
でも、歯を失ってしまうほどの重篤な歯周病の人は、歯周病患者全
体の20%程度ともいわれていますから、それほど恐れる疾患では
ないのかもしれません。
歯なんて無くなったって、死ぬわけでは無いですから。
歯周病は歯周病原細菌が引き起こす、と言われると、じゃあ歯周病
原細菌をどうにかしようというふうに思われるかもしれません。
しかし、歯周病原細菌というのは基本的に誰の口の中にもいる口腔
内常在菌であり、太古の昔から存在する菌であり、人間以外の哺乳
類の口の中にだっている、非常にありふれた菌なんですよ。
だから、歯周病原細菌を口の中から取り除こうなんて発想は、大腸
菌を大腸から取り除こうという発想と同じくらいに馬鹿げています
。
でも、こんな馬鹿げたことを大真面目に考えている人たちが歯周病
専門医であったり、大学の歯周病学講座の人たちだったりするわけ
です。
暇な人たちもいるんだねえ、ってお思いの方、それは非常に常識的
な考えです。
実際そういう輩の中には、患者さんのプラークを実体顕微鏡で見せ
て、「あなたのお口の中にはこんなにいっぱいの歯周病原細菌が住
み着いています」なんて脅して、大金を巻き上げたりするのだって
いるんですよ。
本当に、ろくでもない連中です。
まさか皆さんは、そんなあからさまな詐欺に引っかかったりしてい
ないでしょうね。
そんな誰のお口の中にもいる歯周病原菌ですが、そういった細菌か
ら歯ぐきの健康を守ってくれている存在があります。
それが、”免疫”です。
体は様々な免疫機構を駆使して、体を多種多様な細菌やウイルスな
どから守ってくれています。
この免疫システムの中枢は、幼少期は胸腺にありますが、成長とと
もに胸腺は退化していき、腸管に移ってきます。
人間の腸管には免疫細胞の実に60~70%が存在しており、正に
免疫防御の最前線になっているのです。
この腸管免疫が正常に働くことで、歯周組織を細菌の攻撃から守っ
てくれているのです。
野生動物は歯を磨きません。
歯医者に行って定期的に歯石を取ったりもしませんし、殺菌成分の
入ったマウスウォッシュ剤で食後にクチュクチュしたりもしません
。
しかし、野生動物の口の中にだって、ちゃんと歯周病原細菌は存在
します。
プラークだってありますし、歯石だって付きます。
それでも、歯周病にはなりません。
それこそ、免疫のおかげです。
腸管免疫が正常に働くためには、普段の食生活が非常に大切です。
腸内細菌もまた、腸管免疫の正常化にとって無くてはならない存在
です。
そういったことを一切無視して、いかなる歯周病治療を口腔内に施
しても、長期的な成功や安定は決して得られることはありません。
そんな当たり前のことすら、日本の歯医者は知らない人が圧倒的多
数なのです。