むし歯の内科的治療
むし歯になったら歯を削る、というのは常識というか、一般的に行われている事です。歯科という分野は歯を削ったり、歯ぐきを切開したりと、医療分野としては外科領域になります。投薬中心で治療する内科的発想は、歯科医師には通常ありません。
しかし、歯科疾患を原因から考えたときに、内科的な対応だってときには有効であり、むしろ必要であるということも分かります。しかし残念ながら、多くの歯科医師はむし歯を根本原因から考えようとはしません。
むし歯を内科的に診療しようとするならば、まずはむし歯の根本原因を知る必要があります。そして根本原因を取り除いた後で、自然治癒力を促進するような薬剤を用いて治療する、というのがむし歯の内科的治療です。
まずむし歯の根本原因は糖質、特に砂糖やブドウ糖、果糖のような甘みの強い糖類が原因です。ですからまずは、普段の食生活からこれら糖質を徹底的に排除します
。デンプン質さえも、弱いながらもむし歯の原因となりますから、内科的治療を行うに当たっては排除しなくてはいけません。
また、むし歯は栄養欠乏が原因で起こる疾患でもあります。栄養欠乏によって酸に対する抵抗性が低下することが、むし歯の原因の一つだからです。ですから栄養強化を行わなければいけないのですが、これはサプリメントを使う方法や、先住民族の特別の栄養食を参考にする方法などがあります。やはり天然の食材が最も優れていると、僕は考えています。
原因除去を行ったら、次に治療に移ります。ここで痛みやしみる感じなどの症状がすでに出ている場合や、むし歯が大きくなっている場合、また過去に歯医者で歯を削られてしまっている場合は内科的治療の適応外となり、従来通りの外科的歯科治療となります。
ごく初期の小さいむし歯なら、歯の自然治癒能力、すなわちエナメル質の再石灰化を期待して、経過観察で十分です。下手にいじらない、触らないというのが歯にとってはとても大切なことなのです。
しかし、象牙質にまで進行したむし歯だと、何もせずに経過観察だけでは自然治癒が難しい場合があります。その場合は、重曹うがいを指示します。重曹うがいのやり方は、食後、コップ一杯の水(200cc)に、1g程度の重曹を加え、良くかき混ぜたものでぐちゅぐちゅうがいするという方法です。ガラガラうがいではありませんよ。毎食後に行うのが効果的ですが、晩ご飯の後は必ず行ってもらいます。これを一か月続けてもらい、効果を判定して、むし歯の進行が停止し、表面が再石灰化で硬化しているようなら、重曹うがいは止め、定期観察へと移行します。
重曹うがいは予防的に毎日行うようなものではありません。初期むし歯の内科的処置として、期間を区切って行うものです。ですからむし歯の内科的治療を行っている専門医の元で、正しく行ってください。
むし歯の内科的治療にせよ外科的治療にせよ、原因の除去が長期的な成功にとって最も重要ですから、むし歯の原因である誤った食生活の改善を行わずして、どんな治療の成功もあり得ないことを、しっかりと覚えておいてください。
投稿日:2014年5月19日 カテゴリー:予防歯科, 院長ブログ