を予防する方法もまた見えてきます。
農耕はむし歯を生み出しただけではありません。農耕はまた、ビタミンやミネラルなど、特定の栄養素の欠乏によって起こる、欠乏症を生み出しました。もちろん狩猟採集時代にも、飢餓や餓死といった出来事は起こっていたでしょう。しかし少なくとも、特定の栄養素の欠乏という事態は起こってはいませんでした。
農耕はまた、肥満も生み出しました。狩猟採集時代に肥満はありませんし、狩猟採集で生活している先住民族にもまた、肥満はありません。肥満が無ければ当然、肥満に伴う高血圧、糖尿病、冠状動脈性心疾患、脳血管障害、ガンなどもありません。
肥満が無かったということはまた、農耕開始以前は現代人の多くが悩まされている生活習慣病や慢性疾患のほとんどもまた、存在しなかったという事になります。近年の考古学や人類学、進化生物学の発展によって、これらの事が良く分かってきました。
一方、近年急増している疾患に、アレルギー疾患があります。例えば花粉症は、日本ではこの季節に悩まされている人も多いでしょうが、ここ50年ほどの間に急速に増加した疾患であり、これは世界的に共通の傾向です。例えばアメリカでは、スギ花粉はあまり問題にされませんが、8月になるとブタクサによる花粉症患者が大量に発生します。これもまた、ここ50年ほどの間に急増しています。
病気になったらどう治療すれば良いかを考える前に、なぜ自分は病気になってしまったのか、その原因を知って除去することの方が重要です。そしてその原因を知るために、人類がいつからその病気に悩まされるようになったか、その病気を招いた生活習慣の変化とは何かを知るべきでしょう。