糖質の中でも特に危険な糖が、果糖です。果糖を多く含むものとしては、果糖ブドウ糖液
糖や高果糖液糖などの異性化糖が挙げられます。また砂糖はブドウ糖と果糖が合わさった
二糖類なので、50%ブドウ糖、50%果糖として吸収されます。
果糖はブドウ糖よりも10倍糖化能力が高く、血管内皮細胞などを損傷し、炎症を起こします。果糖はインスリンによるコントロールを受けません。果糖は肝臓で中性脂肪となって脂肪肝(非アルコール性脂肪肝、NASH)の原因となったり、VLDL-C(超低比重リポタンパクコレステロール)になって動脈硬化の原因となります。
歯科においては果糖はブドウ糖よりもむし歯を作りやすく、エナメル質の臨界pH5.5よりも酸性にしてしまいます。エナメル質は象牙質(臨界pH6.7)よりも酸に強く、ブドウ糖のみではエナメル質をう蝕にすることは困難です。実際果糖を含まないデンプン質を多く取っていた古代人では、エナメル質う蝕は極めてまれで、歯肉退縮に伴う根面う蝕や咬合面が咬耗して象牙質が露出したところに出来るう蝕がほとんどです。エナメル質う蝕は果糖を含む砂糖を良く摂るようになってからみられるようになります。
果糖が危険な糖であることが分かったのは、糖尿病患者における研究からでした。果糖は血糖値を上げず、GI値が低いため、甘みを欲する糖尿病患者に使われていたことがありました。アガベシロップはメキシコで栽培されているリュウゼツランから作られるシロップであり、果糖分が多く(70~95%)、一時期ヘルシーな甘味料としてもてはやされました。
ところが糖尿病患者に果糖を与える実験を行ったところ、被験者の状態が悪化してしまいました。肥満は悪化し、中性脂肪は増加し、コレステロール値は増加し、血糖値のコントロールも悪くなってしまいました。このため当初の予定期間まで実験を続けることができず、実験は中断されてしまいました。
果糖に天然と人工の物の差はありません。どちらも同じ化学式であり、効果も同じです。工業的に作られた高果糖液糖は害があるが、天然のハチミツであれば問題無いなどということはありません。果糖は果糖であり、ブドウ糖よりはるかに危険な代物です。
このような果糖が少量であれば問題ないとか、天然のものに含まれる果糖は安全であるとかいう輩は、確実に詐欺師です。賢明な皆さんはこのようなペテンに騙されないようにしましょう。