医療法人社団楡樹会 稲毛エルム歯科クリニック

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レアトリル事件


皆さんは「フードファディズム」という言葉を知っていますか?これは、「科学的根拠が無いまたは弱いにもかかわらず、ある食事が良いとか悪いとか誇大に宣伝すること」を指します。「ゲルソン療法」でガンが治るとか、「GOT(五井野プロシージャー)」がガンに効くとか、そういった類のものです。皆さんも聞いたこと、ありませんか?

アメリカでもフードファディズムは盛んであり、むしろ本家といって良いくらいです。昔からたくさんの人が騙され、利用されてきました。そんなアメリカのフードファディズム史上、もっとも有名な事件の一つが、「レアトリル事件」です。

レアトリルというのはアメリカで1970年代に「ガンの特効薬」とうたわれて、大々的に販売された医薬品(健康食品)です。これはアプリコットのタネに含まれる「アミグダリン」を抽出したものであり、クレブス,Srの研究室で開発されました。ちなみにここは種々のインチキ薬を「ガンの特効薬」として販売しており、ビタミンB15(パンガミン酸)なんてものも販売していました。

レアトリルは体内でシアン化水素を発生し、正常細胞には悪影響を与えず、ガン細胞のみを殺すと主張しました。ただし、臨床的な有効性を示すデータは残っていません。

アメリカ食品医薬品局(FDA)が調査に入ると、開発者たちはこれをビタミンB17であると主張し、全てのガンはこのビタミンの欠乏症であると主張しました。長い法廷闘争の後に、FDAはレアトリルの販売を禁止しました。他のフードファディズム同様、レアトリルによって救われた命があるという主張は相変わらず続きましたが、その陰でレアトリルによって失われてた命については、決して語られることは無く、開発者にとっては興味も無いようです。

ちなみにその後の研究によると、アミグダリンを摂取すると体内でシアン化水素(青酸)が発生し、非常に有毒であるため、人体は青酸を無毒化しようとします。青酸は肝臓でローダネーゼという酵素で代謝され、チオシアネートという物質に変えられます。チオシアネートは青酸よりも毒性はかなり低いのですが、それでも甲状腺に通常の量のヨードを取り込むのを防ぐために、酷使された甲状腺は大きく膨らみ、甲状腺腫を起こすことが知られるようになりました。

アミグダリンはこのように危険な物質であり、摂取すべきではないにもかかわらず、今でもレアトリルやアミグダリンを推奨するフードファディストは存在します。例えば日本を代表するフードファディストである東城百合子氏によれば、「アミグダリンはガンの特効薬として知られ、ビタミンB17とも呼ばれて非常に薬効の高い成分であり、アミグダリンが含まれている枇杷の葉は万病に効く特効薬であり、特にガンには枇杷の葉の1300倍もアミグダリンが含まれる枇杷の種をそのままかじるとガンが治る」と述べています。

人の無知を利用するフードファディズムに騙されないように、もっと賢明になりましょう


投稿日:2016年4月27日  カテゴリー:予防歯科, 院長ブログ

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