日本の保険医療だって、良い歯医者はいるだろうとお思いの方、それはどうでしょう?
歯科検診でむし歯と指摘され、歯医者にかかったらむし歯が無かったとします。良心的な歯医者は、むし歯が無いからと治療費を取らず、保険請求もしなかったとします。この歯医者は医療費をなんら受け取ることはできませんが、正しいことをしました。
しかし、もし検診でむし歯と指摘された子どもの親が疑り深い親だったら?きっと別の歯医者に連れていく事でしょう。
別の歯医者で診てもらったところ、やっぱりむし歯があると言われました。治療も受けました。親はその歯医者に、「実は、別の歯医者で診てもらったところ、むし歯が無いって言われたんです」と言ったとします。そうしたらきっと歯医者は、「ああ、その歯医者はむし歯を見落としたんですね」と答えることでしょう。
その親にとって、「良い歯医者」は一体どちらでしょう?むし歯が無いと言った歯医者でしょうか?むし歯を治療した歯医者でしょうか?
元々その子にむし歯が無いのなら、最初の歯医者の行為が正しいでしょう。でも、検診を行ったのもまた、歯医者です。親は検診でむし歯があると言われたら、むし歯があると信じ込むものです。ですから、後者の歯医者の方を信頼する親の方が、世の中では圧倒的に多いのが現実なのです。
こうして、正しい診断をして歯を削らなかった歯医者は、一銭ももらえないどころか、むし歯を見落としたヤブ医者のレッテルを貼られます。一方で歯を削った歯医者は名医とされ、親の口コミで人気が上がるでしょう。
結局のところ、保険診療ではいくら誠意を持って正しいことをしても、患者には伝わらず、経営も苦しくなるだけということ。こういう事って、無農薬の自然農法を行っている農家でも同じことが言えますね。世の中は、「悪貨は良貨を駆逐する」ように出来ているものなのかもしれません。