「健康の秘訣は健康な人から学べ」というのが僕のモットーです。先住民族にはむし歯も
歯周病も不正咬合もみられません。だったら先住民族の食生活を真似れば、むし歯、歯周
病、不正咬合の予防が可能だろうというのが、当クリニックで行っている予防歯科であり
、食事指導としての先住民食です。
先住民食の食のモデルは、そのものズバリ、先住民族です。彼らと同じような食事をすれば、彼らと同じような健康が得られるという、非常に分かりやすい考え方に基づいています。ところが世に氾濫している様々な食事法の中には、モデルがはっきりしないか、もしくはモデルが無い食事法というものもあります。僕に言わせると、その食生活で健康で生活している人々が存在しないのに、なぜその食事法が人間本来の健康が得られる食事法といえるのか、全く理解に苦しみます。
例えば玄米を主食にすると健康になれると謳う、マクロビオティックや(東城百合子の)玄米菜食という食事法があります。しかし、日本にしても外国にしても、古今東西玄米菜食で健康で生活している民族や文化というものは全く存在しません。玄米菜食には食のモデルとなるものが無いのです。それもそのはず、玄米菜食の提唱者は明治時代の帝国陸軍薬剤官である石塚左玄であり、彼は「脚気」の治療食や予防食として玄米を推奨したのでしたから。
それに比べれば、幕内秀夫の粗食の方が、まだモデルがあるだけ説得力があります。粗食のモデルは、山梨県北都留郡上野原町棡原(ゆずりはら)の村民の食生活です。実に狭い範囲の少ないモデルではありますが、モデルがあることに違いはありません。ただしこの棡原の村民の健康状態をアボリジニーやイヌイット、マオリ族、ピダハン、ヤノマミ、プナン族、アイヌの健康状態と比較した場合、どちらの健康状態がより良いでしょうか?少なくともう蝕(むし歯)の罹患率で比較すれば、後者の方が圧倒的に有利でしょう。
お口の中はボロボロになっても、肉体的には健康になれる食事法など、どう考えたっておかしいでしょう。それでもモデルがある食事法ならこうやって比較できるだけマシです。
僕が先住民食にこだわるのには、こういった理由があるからです。モデルが存在しないという点では、玄米菜食やヴィーガン、ナチュラルハイジーンもそうですし、また糖質制限、ケトジェニック、MEC食などもそうです。モデルが無ければ本当に健康にとって良いかどうか、判断できません。
肉が健康に良いという科学論文ばかり100個集めれば、肉食賛美の理論を作ることは可能ですし、逆に肉は健康に良くないという論文ばかり100個集めれば、肉食否定の理論を作ることができます。科学論文など、都合の良い理由づけ以上の価値なんてありません。
やはり食のモデルが何であるかが、本当に正しい、説得力のある食事法を見つける最も重要な目安になると僕は考えます。